一般建築物石綿含有建材調査者の難易度

資格

トップ画像は一時期、石綿含有建材に表示されていたアスベストマークです。全ての建材にこんな表示があれば何も苦労は無かったりするのですがね。そんな訳にはいかないので大変なんですよね。
※2022年9月26日に執筆しております。石綿関係法令は改正も多く、年月の経過と共に新ルールに変わっていくものと思われます。また法解釈の誤りなどがあったらすみません。複雑なんですよね。

一般建築物石綿含有建材調査者とは

現在は公的資格扱いです。国土交通省告示に定められた資格制度です。
石綿作業主任者、石綿取扱い作業従事者特別教育に関する様々な事は前の記事でも述べておりましたのでこれらの内容は割愛します。
基本的に「石綿含有建材調査者」については石綿作業主任者資格を取得した次のステップとして考えていった方が良いかも知れません。

この資格についてざっくり説明すると、石綿を0.1%より多く含有するアイテムの製造が禁止された2006年(平成18年)9月以前に竣工の建築物について、ケイ酸カルシウム板(ケイカル板)や石膏ボード、壁紙自体や床材の接着剤にまで石綿が混入している可能性も否定できず、それらを剥がしたり穴を開けたりする工事が想定される場合事前に石綿の含有有無を調査し、適切に対応しなければならず、その調査を行うことができる資格ですね。

具体的な例を挙げると、古い物件の床CFシートを張り替えたり、壁紙を張り替えたり、エアコン用の貫通穴を開けたり、水漏れ修理で天井を開口したり、間仕切りを解体したり、これらの工事は全て事前調査が必須になりますね。
これは大変です。小修繕などでも現場作業に携わる方々全員が「石綿取扱い作業従事者特別教育」を受ける必要があり、現場統括者は「石綿作業主任者資格」が必要になり、且つ「一般建築物石綿含有建材調査者」も取得しておかないと仕事にならないといった事態が想定されます。

因みに類似の資格は複数存在します。
これら資格が無いと2023年10月以降、石綿の事前調査が実施できなくなります。業務独占資格ですね。

・一戸建て等石綿含有建材調査者
・一般建築物石綿含有建材調査者
・特定建築物石綿含有建材調査者
※この他に「日本アスベスト調査診断協会に登録された者」も調査可能ですが、都心部で講習を受講し入会した後に年会費まで掛かる制度の様子につき説明は割愛します。
※類似資格に「アスベスト診断士」というものも存在しますが、2023年10月以降この資格をもって事前調査を行う事は不可能になると考えています。

「一戸建て等」のやつは居宅の専有部分のみに限定され、例えば共同住宅などでは共用部分の調査ができないなどの縛りが掛かる様子。費用や難易度などもほぼ変わらない事から別段の事情が無い限りは「一般建築物」で取得すべきこの2資格は「石綿作業主任者」を取得していれば実務経験不問で受講可能。

「特定建築物」のやつは「石綿作業主任者」取得後であれば5年の経験が求められる上に、実地試験や口述試験まである曲者ですね。そのくせ現行制度では「一般建築物」との明確な差はない様子。

そういった状況につき、私は一般建築物石綿含有建材調査者を取得してみました。私自身が業務で使用する訳じゃないので講習費用等は自腹ですがね。純粋な興味本位です。

一般建築物石綿含有建材調査者講習の概要

私は秋田県労働基準協会の開催した講習を受講しております。開催元によって修了試験の内容であったり、受講費用などは異なるかも知れません。予めご了承ください。
講習科目
・建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識1(1時間)
・建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識2(1時間)
・石綿含有建材の建築図面調査(4時間)
・現地調査の実際と留意点(4時間)
・建築物石綿含有建材調査報告書の作成(1時間)
・修了試験(1時間半)
こちらもお察しの通り2日間の座学講習で、最後に修了試験があります。
修了試験の難易度は石綿作業主任者技能講習のそれと比べると難しいものになっております。

受験資格:学歴や実務経験等により細かく規定されていますが「石綿作業主任者」を取得していればそれで事足ります。

受講料:30,000~50,000円ほど。私は32,000円ほどで受講しています。

前述の通り今後は建設業界の方々ほぼ全てに関わってくるであろう資格につき、受験者数がエライことになっているらしいです。石綿作業主任者の受講時もそうでしたが受講申し込み開始とほぼ同時に予約がいっぱいになるという状況。
受講定員も50名だったのがいつの間にか倍の100人になってるし。どういうカラクリなのかというと、メイン受講ルームの隣の会議室も借り切ってしまいサブ受講室では講師の音声のみ飛ばしてパワーポイントの資料はスクリーンに映して無理やり受講するスタイルですね。
慣れない事をするせいか、たまにプロジェクターの接続が切れてしまい別室受講者の画面に何も映らないという事態も発生していました。
年に3回ほどの講習も倍のスケジュールにしているらしいですが。これは業界団体ぼろもうけですね。

講習内容

講師は作業環境測定士、石綿建材調査者の資格を持つ調査分析会社勤務でプロの方でした。3名ほど交代しながらといった感じ。
テストに出るであろう重要箇所は適宜教えてくれるのでマーカーを引きながらテキストの角を折っていきます。最終的な折り目は50箇所以上になった気がするので、マーカーを引いた部分全てがテストに出たわけではない気もします。
講師の方によってマーカーを引く箇所が明確であったり不明瞭であったりします。とりあえず怪しい部分は引いておきましょう。マーカーを引きながらも、その重要論点がどんな問題として出題され得るのか。この辺を意識しながら聞ければ修了試験時に役立ちます。

・建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識1(1時間)

この科目に関しては「石綿作業主任者」資格があれば受講免除となるらしいですが、受講開始前の開講オリエンテーションには出席せねばならず、試験科目からの免除も無いため受講しないという選択が実際のところは難しい感じのスタイルでした。100人ほど受講していましたが誰一人として中座したりしていませんでしたね。

・建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識2(1時間)
基礎知識の2時間目。ここからは中座厳禁になります。仕事の電話等で抜けようものなら失格にするぞというお話もありました。
内容としては先ほどの1時間目も含めて「石綿作業主任者実技講習」で聞いた内容ばかりな感じ。石綿とは何か。石綿の有害性。建築物含有石綿のレベル分類。関係法令に関する内容でした。

・石綿含有建材の建築図面調査(4時間)
この辺から調査者の本題に入ってくるような内容になります。建築基準法とその防火規制に着目し石綿使用可能性を探る方法。設計者の思想に思いを馳せる方法。レベル分類ごとの建材に関する特徴。建築図面の読み解き方。石綿含有建材情報の入手方法。書面調査結果の整理方法。
具体的な業務に関する内容の講習になりますね。昼休憩をはさむので睡魔が襲いがちです。ここで寝てしまうと重要論点を聞き漏らすのでカフェイン摂取してでも意識を保ちましょう。

1日目は修了です。重要論点のうち、理解の怪しい箇所はおさらいしておきましょう。2日目は復習の時間があまりないですからね。

・現地調査の実際と留意点(4時間)
書面調査結果を元に現場へ赴き現地調査する流れから教わっていきます。装備の事前準備。関係者へのヒアリング。改修工事や増築工事の見分け方。試料採取の方法。現地調査の写真記録撮影方法。試料分析の種類や精度。分析結果報告書の読み方。
だいぶ踏み込んだ内容になってきました。おそらく解体業などを除けば大部分の建築関係者の方々は分析に回すほどの踏み込んだ調査を行う事は少なく、レベル3の建材を「みなし含有」として処分する事になる気がします。その場合でも調査や調査記録は必要になるので知識や資格は必須ですね。

・建築物石綿含有建材調査報告書の作成(1時間)
いよいよ最終講義。これはそのままですね。最終的に調査した結果をどのように報告書にまとめるのか。依頼者へどのように報告するのかなどです。
このあとはいよいよ修了試験です。

修了試験の難易度

難易度が気になるところと思われます。先ほども述べましたが実施回や実施団体によって異なる部分あるかも知れません。私が受験した回での感想といった程度にご覧ください。
合格率は概ね60~90%ほどと言われています。知り合いの業者さんが複数人で受験し全滅だったという話も聞いていたのでやや警戒していました。
実際に修了試験を受験した感覚的には問題なさそうでした。

試験時間:1時間半(30分経過後途中退室可能)

出題数:40問

合格基準:60%以上(24問以上)

出題形式:4肢択1(全て誤答肢を選択させるもの)

一応本気で取り組んでみた結果ですが、判断に迷った問題が3問。それ以外は全て自信をもって回答出来ました。試験時間は長めにとられていますが、全ての問題肢に目を通して回答を出し、回答用紙に記載した番号を2周ほどチェックし終えたのが試験開始後25分ほどでした。
30分の途中退室で同時に席を立った方が10人ほどいた印象です。
全講義を一睡もせず、重要論点の聞き漏らしが無く真面目に受講できれば概ね問題ない難易度といえます。建築基準法や建築図面に慣れていない方は難しく感じる部分もあるかもしれません。

因みに受験不合格だった場合、約3年間は再受験可能で試験手数料が5,500円だそうです。講習の遅刻等で失格になったら再講習となる様なのでそれには十分注意しましょう。結構な金額ですから。

修了試験から約1週間後、無事に修了証が簡易書留郵便で届きました。
試験不合格の場合は「不合格通知書」が届くらしいですね。これはおそらく簡易書留ではないでしょう。郵便局員がチャイムを鳴らさなければ不合格!みたいな感じでチャイムが鳴る直前は妙な緊張感がありましたね。

ではまた。

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