石綿作業主任者の難易度

資格

トップ画像は一時期、石綿含有建材に表示されていたアスベストマークです。全ての建材にこんな表示があれば何も苦労は無かったりするのですがね。そんな訳にはいかないので大変なんですよね。
※2022年9月15日に執筆しております。石綿関係法令は改正も多く、年月の経過と共に新ルールに変わっていくものと思われます。また法解釈の誤りなどがあったらすみません。複雑なんですよね。

石綿作業主任者とは

近年、特にその有害性の高さがクローズアップされ何かと話題になっている石綿(いしわた)ですが、石綿から労働者や近隣住民等の関係者を守るため、労働安全衛生法に定められた作業主任者の一つですね。こちらも立派な国家資格です。
事業者は労働災害防止のため、石綿を0.1%より多く含有するアイテムを取扱う場合に石綿作業主任者を選任しなければなりません。
石綿含有建材はレベル1~3までに分類されており、今までは最も飛散性の高いレベル1や、次いで高いレベル2までの規制がメインでしたが、石綿障害予防規則等の相次ぐ改正によって比較的飛散性の低いレベル3建材にも強めの規制が張られるようになってきました。
例えば、水回りや軒天井などに施工されることの多いケイ酸カルシウム板(ケイカル板)なども原則破砕禁止という事になっています。
もっと言えば壁紙自体や床材の接着剤にまで石綿が混入している可能性も否定できず、それらを剥がしたり穴を開けたりすることも規制されつつあります。
こんなことを言い出されると解体業者さんのみならず、内装業者さんや電気屋さん、水道屋さんなんかには既に必須資格となりつつある様子ですね。

石綿取扱い作業従事者特別教育とは

作業主任者と同じようなものとして作業従事者という規定があります。労働安全衛生規則にて定められた安全衛生教育で、事業者が一定の業務を行わせる場合、従業員側に受講させる義務のあるものです。
石綿作業主任者と何が違うのかといった点では、特別教育は現場作業員作業主任者は現場指揮者といったざっくりした解釈で概ね構わないと思われます。
因みに石綿作業主任者は石綿特別教育を省略しても良いという規定があるため、従業員全員が石綿作業主任者を取得してしまうという方法もありですね。
特別教育は外部団体が実施するものを受講しても良いのですが、石綿作業主任者が事業所内で講師をすればそれでも大丈夫ですね。ただ、講習科目や範囲・時間は規定を満たす必要があり、行ったことの証明である記録は残しておく必要があります。

特定化学物質作業主任者とは

かつて石綿も特定化学物質のカテゴライズ下にあったため、2006年3月31日以前に特定化学物質作業主任者を取得されていた方は改めて石綿作業主任者を取得しなくとも石綿作業主任者として選任されることができます。
現行制度では特定化学物質から石綿が独立したことに代わり、四アルキル鉛等が統合され、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者という資格になっていますね。
個人的に四アルキル鉛は関係しないものの、溶接ヒュームはプライベートで吸入する可能性があるので興味が湧いたらこちらも取得するかも知れません。

石綿作業主任者技能講習の概要

ようやく技能講習の内容まで話が辿り着きましたね。講習科目は以下の通りです。
・健康障害及びその予防措置に関する知識(2時間)
・作業環境の改善方法に関する知識(4時間)
・保護具に関する知識(2時間)
・関係法令(2時間)
・修了試験(1時間)
ええ、お察しの通り1日では終わりません。2日間の座学講習で、最後に修了試験があります。
試験は簡単なものなので特に問題はありませんが、全カリキュラムを寝過ごして全く聞いていないなどの場合では落ちるかも知れませんね。100人ほど受験すると1人ほど落ちるとも聞き及んでいます。確かに興味が湧かない人は眠くなる内容かもしれません。
講習費用はテキスト代込みで約1万円~2万円ほどでしょうか。私は1万5千円ほどでした。

講習内容

実施団体や講師の方によって内容は異なると思われますが、受講内容は以下の感じでした。ご参考までに。
・健康障害及びその予防措置に関する知識(2時間)
医学博士の先生が講師を務めて頂いておりました。石綿の有害性をこれでもかと言わんばかりにガシガシ説明する内容のテキストなので、医学用語がバンバン飛び交います。個人的にすごく興味深い内容だったので聞き入ってしまいました。
以前、建築施工管理技士試験の際などにも石綿の性状なんかはふわっと学んだ気がするのですが、せいぜい「石綿は煙草と同程度の有害性で、白石綿(クリソタイル)よりも茶石綿(アモサイト)や青石綿(クロシドライト)の方が有害性が強い」程度の内容だった気がします。それに比べるとエライ踏み込んだ内容まで記載されているので驚きましたね。
石綿が身体に害をなすメカニズムの話なんかは初耳でした。肺胞内に留まるもののうちでも長い石綿繊維をマクロファージが貪食した際、マクロファージ自体が繊維に破壊されてリソゾーム酵素が放出されることで炎症を起こしたり、活性酸素が生じたりという連鎖的悪影響が起こり、結果的に肺がんや中皮腫を引き起こすらしいですね。
中皮腫は死亡率も高く、比較的少量の石綿吸引でもリスクと成り得るようです。こんな話を聞くと自分も過去に吸っている可能性は高いので覚悟はしておく必要がありそうですね。
横道に逸れましたが、興味がありましたらぜひ受講してみてください。

・作業環境の改善方法に関する知識(4時間)
講師は作業環境測定士、石綿建材調査者の資格を持つプロの方でした。
石綿の種類や物性のお話しや、石綿がかつてどのような製品や用途で使用されてきたのか、解体時の事前調査方法、除去作業時の石綿粉塵曝露対策、局所排気装置、作業環境測定など実務的且つ多岐に渡る内容でした。
講師の方の実際の経験談なども交えて解説してくれたので、長丁場だったもののとても聞きやすい内容でした。

・保護具に関する知識(2時間)
呼吸用保護具(マスク)、保護衣に関する内容ですね。
これは個人的に有機溶剤や粉塵を取扱う事が多かったので既にRL2基準の取替式防塵マスクを持っていました。これはこのまま使用できることも確認できたので良かったです。
マスク規格は粒子捕集効率や環境下のオイルミスト有無などによって細分化されていますが、レベル3の石綿ではRL2基準のものを持っていれば問題ありません。

・関係法令(2時間)
講師は秋田県労働基準協会の専務理事でした。
法令の講習なので退屈なテキスト読み上げだと覚悟していたのですが、まさかの180ページにも渡る独自パワーポイントでの分かりやすい解説で、尚且つカラーのプレゼン資料を配布してくれるという神対応。このカラー資料もらっただけでも1万5千円分の価値があったなと思いましたよ。
専務理事も経験豊富な方でいらして、特に石綿に関する知識量は相当なものを感じました。有意義な講習をありがとうございました専務理事。

修了試験の難易度

先ほども述べましたが難易度は大したことないです。
一応、私が受講した際の修了試験概要を記しておきます。これは実施回や実施団体によって多少異なるかも知れませんね。

試験時間:1時間(30分経過後途中退室可能)

出題数:20問

合格基準:各科目の40%以上、全体の60%以上
以下、各分野ごとに5問、合計20問なので各分野ごとに最低2問の正解が必要。且つ、全体では12問の正解が必要。

出題形式
・健康障害及びその予防措置に関する知識(三肢択一)
・作業環境の改善方法に関する知識(三肢択一)
・保護具に関する知識(十肢択五)
・関係法令(三肢択一)
保護具のところだけ10の選択肢から正しいものを5つ選べスタイルでしたが、他は全て3択でしたね。

一般建築物石綿含有建材調査者とは

石綿作業主任者に合格したとして、次なるステップも存在しています。それが建築物石綿含有建材調査者ですね。類似の資格が複数存在します。
これら資格が無いと2023年10月以降、石綿の事前調査が実施できなくなります。

一戸建て等石綿含有建材調査者
一般建築物石綿含有建材調査者
特定建築物石綿含有建材調査者

「一戸建て等」のやつは居宅の専有部分のみに限定され、例えば共同住宅などでは共用部分の調査ができないなどの縛りが掛かる様子。費用や難易度などもほぼ変わらない事から別段の事情が無い限りは「一般建築物」で取得すべき。この2資格は「石綿作業主任者」を取得していれば実務経験不問で受講可能。

「特定建築物」のやつは「石綿作業主任者」取得後であれば5年の経験が求められる上に、実地試験や口述試験まである曲者ですね。そのくせ現行制度では「一般建築物」との明確な差はない様子。
これは一般建築物石綿含有建材調査者も取得しておかないと仕事にならない業種が増えそうですねえ。

ではまた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました