本気を出して防音室を自作してみた

ものづくり

そうだ、防音室を作ろう。
そう思い至ったのは2020年6月頃の事でした。私は特に楽器をやる訳でもないのですが、多趣味な中でも、強めの趣味がカラオケだったりします。新型コロナウイルスCOVID-19が猛威を振るい始めて約半年。飛沫核感染だの会食の禁止だの、この感染症の感染力には様々な論争が繰り広げられている最中ではありますが、その間、全くカラオケに行っていません。
正直なところ、歌っていられるのは独りで交通量の少ない通りを運転している車内くらいのものです。これはいかん。趣味を理不尽な理由で我慢させられるほど苦痛な事はありません。
これに対する解決方法として思いを巡らせてみます。

コロナ禍の中でもカラオケを楽しむ方法

1.独りカラオケに行く
一般的に考える場合、これが望ましい解決方法かもしれません。しかし私は極度の出不精です。外出による感染リスクも極力避けたいです。運動するにしても、ジムに通いたく無さ過ぎてルームランナーは買いましたし、ウェイトトレーニングの為にパワーラックまで自室に備え付けておる始末。そもそも独りカラオケ行ったことが無いし気恥ずかしいというのもあります。却下。

2.防音室を買う
これも前々から憧れを抱いていた事柄ではありました。広さ的には外寸で2帖くらいならば確保できそうな感じもする。ただ、防音性能はしっかりしたのが良いなぁ。ヤマハのアビテックスならば満足できそうな気がする。値段を調べてみましょう。

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150万円?御冗談を。想像していた金額より桁が一つ多いですね。予算は出せても15万円くらいが上限ですよ。もっと簡易的な物はないのかね。

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簡易的な物で15万円くらいのものは確かに存在する。しかし、15万円払ってこれを購入して、いざ使ってみたら全然ダメでした。そんな事になったら困るんですよ。もっと安いもので、段ボールを組み合わせたようなものも存在しましたが、段ボールに10万円は支払えません。私が思うよりも高性能な段ボールでしたらすみませんが、却下。

3.防音室を自作する
もうこれしかないだろうな、と薄々自分でも気付き始めていました。様々な先人達が自作した防音室をブログで公開されております。皆様、大変工夫を凝らし、自らの予算や望む性能と相談し、折り合いをつけて制作されている様子です。
一般公開されている情報の、ほぼ全てに目を通したのではないかと言うほど調べに調べましたね。合板で箱を作って内側に吸音材を張った簡易的な物から、部屋を丸ごと防音室に作り替える様な本気度の高いものまで様々ですね。情報を公開されている皆様。大変参考になりました。ありがとうございます。
その中でも特に、杉原土地様では自作防音室を賃貸に出されているらしく、プロの業を惜し気もなく公開されており、非常に参考となりました。この場を借りて御礼申し上げます。因みにこちらの杉原さん。一級建築士かつ薬剤師であったり、数々の難関資格を取得されておるクレバーなお方。私も資格マニアとして勝手に憧れを抱かせて頂いております。
そんなこんなで、私は防音室の自作を決意しましたとさ。

完成した防音室の性能

2020年の6月から、構想を練る事2ヶ月、設計にもう1ヶ月、9月頃から工事に着手したものの、1級建築施工管理技士試験の受験で一時中断しつつ、ようやっと完成しましたので、ここにご報告いたします。約半年。永かった。
制作途中に経過報告などを一切しなかったのは、完成するかどうかが若干不安だったことと、完成品の防音レベルがあまりにお粗末だったら大変だなと思ったことが大きいですね。
何とかひとまず完成し、想定していた防音レベルも達成したので、晴れてこうして記事を書いている次第です。
詳しい防音の理論やら何やらは未だに理解しきれていない部分も多いのですが、簡易的な騒音計で自ら測定した遮音性能=Dr等級で言うと「Dr35~40」ほどの性能は確保できたみたいです。
ざっくりした説明をすると、防音室内で90dBの音(パチンコ店内レベルの騒音)を出した状態で、防音室外に出ると、50~55dBの音(普通の話し声レベルの音量)にしか聞こえないという性能ですね。
この辺は、自分が理解できた範囲内で、次回以降の記事にまとめていきたいと考えております。

自室内に防音室を作成したので、防音室の外側である自室内では話し声レベルの音漏れは感じるのですが、自室を出て扉を閉めると微かな音しか聞こえない。更に廊下を挟んだ寝室内に入り扉を閉めると、もう全く聞こえないレベル。これを求めていたんです。
遮音特性の都合上、高音はカットできても低音はカットし辛いという問題もあります。現状、低音では実験していないので何とも言えませんが、例えば中でドラムを叩いたりすると音漏れは激しくなると推察できます。そんな事はしませんがね。

防音室の寸法、重量や総費用

これは皆様、気になる点だと思われます。
まず寸法。平面的には外寸で約2帖。一坪風呂とほぼ一緒のサイズですね。壁が厚いので、有効寸法は一坪風呂よりやや狭いくらいです。
続いて、総重量は恐らく500kg前後と思われます。これは防音レベルを極限まで高めたいけれども、2階の床が抜けたらマズいという両天秤に掛かった結果の妥協ポイント重量で、予算の15万円にも密接にリンクしています。
そして総費用です。ざっくり計算してみましたら約12万円ほどの材料消耗品を購入しています。この金額には購入した工具の類は含んでおりません。自宅倉庫に眠っていた諸々のガラクタ、、もとい貴重な材料を何らかの形で流用したものも数多くあります。それらは金銭換算していません。
そして、これから購入するであろう追加分の吸音材や内装仕上げ材の事を考えると、ちょうど15万円くらいになりそうな気が致します。

防音室のこだわりポイント

制作した手順や詳細、そういったものは次回以降の記事に書いていくつもりですが、ここでは個人的にこだわったポイントを簡単に紹介していきますね。

1.二重浮き床工法
この呼称が正しいのかさえ良くわかりませんが、床面に響く音、つまり階下に漏れる音を極力排除するため、部屋の床と防音室の床をなるべく、直接音が伝わり辛い感じに仕上げてみました。具体的には床材の一部として防振ゴムとグラスウールボードを使用しています。

2.第二種換気方式を採用
防音室は気密性を極限まで高める必要がありますが、全ての隙間を塞いで、全く換気ができないと中で酸欠になり倒れますね。相反するようですが換気口は必須です。換気口から音が漏れないようにサイレンサーを取り付けつつ、換気扇も取り付けるのです。換気扇と言うと、浴室の天井に付いているアレが真っ先にイメージできますが、室内に換気扇があると、換気扇のモーター音もうるさいし、陰圧の室内で全力で歌っていると高山病的にふらつきそうなイメージにより、換気扇を外に設置しました。外の空気を換気扇で室内に押し込み、排気は換気口から自然に出ていく方式で、室内は陽圧に保たれます。
※陰圧・陽圧室内の人体への影響はよく分かりません。個人的なイメージです。いずれにせよ換気扇による微弱な圧力なので、どちらも実際には大した影響ではないものと考えています。

3.全工程を単独で施工すること
材料の買い出し・運搬のみ、実父の軽トラックに助けてもらいましたが、本来はそれさえもホームセンターの軽トラレンタルサービスを使用すれば何とかなった事です。施工に関しては全く独力で完成まで漕ぎつけられました。完成品は相当の重量物ですが、小分けのパーツを2階の自室まで運んで、組み立ては主に自室内で行いました。最大で30kgほどのパーツを運んだ際は途中で落とさないかヒヤヒヤしましたね。
工程上必要に迫られ、使用したことのない工具を買ったりもしましたが、それもまた良い経験となりました。

防音室の写真

もったいぶっているつもりもないのですが、完成品の写真を掲載しておきます。
自室に入るなり、圧倒的な存在感を放つ無骨で巨大な木の塊。これが完成した防音室です。壁面での外寸はH2,350mm×1,820mm×1,720mmという事で約2帖弱。天井はスレスレ。写真上部の出っ張りは排気口です。
部屋の奥に進み、回り込んだ位置に入口ドアがあります。開口寸法はH1,830mm×W700mmとやや低い感じ。ほぼ自分しか使用しないので必要十分な感じで。右上に見える出っ張りが換気扇付き強制吸気口です。
室内の床はタイルカーペット張り仕上げ。壁面は合板打ちっぱなしですが、そのうち吸音材にガラスクロスでも張ってそれを何らかの方法で固定しようと思案中。コンセントは贅沢にも3箇所に設置。TVを観るかどうかは不明ですがTVアンテナケーブル、有線LAN配線も引き込みました。室内有効寸法はH2,130mm×1,560mm×1,460mm。これだけ広ければギターだって弾けそうだ。私は弾けませんがね。

目次

防音室DIYシリーズの目次です

1、本気を出して防音室を自作してみた
2、防音室とは。遮音と吸音の違いと防音理論編
3、防音室を2階に設置する場合の床面耐荷重について
4、防音と窓からの音漏れ、その対策について
5、防音室に望む性能と重量の折り合い、設計について
6、防音室の床パネルと浮き床工法について
7、防音室の壁パネル作成、床との接合について
8、防音室の天井パネル作成、壁との接合について
9、防音室の電源引込、電気工事について
10、防音室の吸気口、排気口の作成について
11、防音室の内天井、内壁張りについて
12、防音室ドアの作成、取付方法について
13、防音室のドアノブ取付、グレモンハンドルの作成について
14、自作防音室の完成と総評  ←今ここ

かなりの長編企画になりましたが、何とか書き終える事ができました。(2021年2月27日)

ではまた。

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